やすまるよう遠《とお》のいて、身辺《しんぺん》の平和を守るか(この際|扶養《ふよう》の責任あらば、それだけは物質だけでも果《はた》すべし)、さもなくば、妻は身をもって円満に尽《つく》し、親、親類に夫の折合《おりあ》い悪《あ》しき部分を補《おぎな》うべし。

(9)[#「(9)」は縦中横] 失業している夫
 妻の身の自分が内職でもして家計を立てようとする努力とともに、失業状態にある夫の心は、とかくひがみ[#「ひがみ」に傍点]易《やす》くなっていますから、妻は平常より寧《むし》ろ夫を敬愛《けいあい》する態度に出《い》でよ。夫は心明るく次の職業を探す勇気に向《むか》えましょう。

(10)[#「(10)」は縦中横] 大酒家《たいしゅか》の夫
 何かほかの嗜好物《しこうぶつ》に転換させるか、もし万《ばん》不可能な時は、妻自身大酒をのむか、但《ただ》しはのみたる振《ふ》りで酔《よ》っぱらって困らせて見せるか、知人の大酔家を、夫のしらふ[#「しらふ」に傍点]の時に夫の眼の前へ連れて来て見せしめにするかです。

(11)[#「(11)」は縦中横] 移り気の夫
 正当に警戒《けいかい》し、懇願《こんがん》して見ても駄目《だめ》でしたら、妻自身も移り気の振りをして見せしめてやりなさい。それでもだめならあきらめるか、別れるか、どちらでも。

(12)[#「(12)」は縦中横] 家にばかりいる夫
 家にばかり夫がいて困るのでしたら、散歩や活動に妻が誘って御覧《ごらん》なさい。嫌だと云ったら妻一人、夫を家へうっちゃって出て寂しがらせて御覧なさい。手のない家でしたら、盛んにお使いでもおたのみなさい。

(13)[#「(13)」は縦中横] 家事に口出ししすぎる夫
 家事に口を出し過ぎる夫に困ったら、一週間|位《くらい》そら[#「そら」に傍点]病気をして、夫に家事|万端《ばんたん》の世話をやかせ、負担に堪《た》えない経験をさせたらどうですか。お客の前などで、だしぬけにあれを出せ、時ならぬ時分《じぶん》にこれはないかと、喰《た》べものなど主婦の予算以外な注文をする夫をこらしめるためには、あとでその時の費用を誇張《こちょう》し、また労力の超過《ちょうか》をしめすため、そら[#「そら」に傍点]病気でもして見せます。

(14)[#「(14)」は縦中横] 職業婦人の夫
 職業婦人の夫はそれこそ妻に思いや
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