人がある。多くは神経質で思い過《すご》しの人に多い。一《いっ》しょになって心配してやらねば不親切だといってヒガ[#「ヒガ」に傍点]むし、そうかといって心配すればキリ[#「キリ」に傍点]が無《な》いし、仕末《しまつ》に悪い。心機一転《しんきいってん》ということもあるから、朗《たから》かに奮闘《ふんとう》的な気持ちになれるよう、思い切って生活を革新《かくしん》するとか、強い刺撃《しげき》を与えて心境を変化させるとか、妻自身|確信《かくしん》と元気を持って助勢《じょせい》するがいい。
(4)[#「(4)」は縦中横] 潔癖《けっぺき》な夫
硝子《ガラス》窓がちょっと曇《くも》っていても気にし、障子《しょうじ》のサン[#「サン」に傍点]にホコリ[#「ホコリ」に傍点]が溜《たま》ってやしないかと、指の腹で擦《こす》ってみる。ひどいのになると一日に五六度オキシフルか、昇汞水《しょうこうすい》で手を消毒しないと、落付《おちつ》いて仕事が出来《でき》ぬというようなのがある。悪いことではないが兎《と》に角《かく》うるさい。また精神上の潔癖家として無暗《むやみ》に人を毛嫌《けぎら》いするものもある。あいつはオベッカ者だからとかあいつはウソ[#「ウソ」に傍点]吐《つ》きだとかいって、口も利《き》かぬ。そんなことをいった日には世間が狭《せま》くなるばかりだから一つ気を大きく持たせるべし。
(5)[#「(5)」は縦中横] 頭のよすぎる夫
どうせ見透《みすか》され尽《つく》すのですから、なまじい夫に対する心のつくりかざりをせず、正直に無邪気《むじゃき》にともに暮《くら》すべし。
(6)[#「(6)」は縦中横] 交際|下手《べた》な夫
交際下手な夫を持った妻は、相手の人が夫の気象《きしょう》を呑《の》み込むまで、妻自身がまめまめしく客にかしずき、その場の調和をたもつこと。
(7)[#「(7)」は縦中横] 学者肌の夫
学者は日常他人に教示《きょうじ》する癖《くせ》をもって暮《くら》す。その気持ちのリズムに添《そ》うて、暮さなければ夫の心情《しんじょう》を荒らす。妻も大方《おおかた》のことは生徒になりたる態度をもって、夫に対侍《たいじ》すべし。
(8)[#「(8)」は縦中横] 親や親類と折合《おりあい》の悪い夫
いっそ親や親類に悪く云《い》われても仕方がない。まあなるたけ主人の気の
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