若い男は武装して弓矢を持っている。若い女は玉など頸にかけ古びてはいるがちょっとした外出着である。若い男は女をみると、一時|立竦《たちすく》むように佇《とま》り、まさ眼には見られないが、しかし身体中から何かを吸出されるように、見ないわけにはゆかないといった。
 女は、自分の前に佇った男は、身体の割に、手足が長くて、むくつけき中に逞しさを蔵している。獣のように毛深い。嫌だなと思うほど、女を撃《う》ち融《とろ》かす分量のものをもっている。女は生れ付きの女の防禦心から眼をわきへ外らした。しかし身体だけは、ちょっと腰を前横へ押出して僅かなしな[#「しな」に傍点]を見せた。池のほとりの桔梗《きちこう》の花の莟《つぼみ》をまさぐる。
 しばらく虚々実々、無言にして、天体の日月星辰を運行《めぐ》る中に、新生の惑星が新しく軌道を探すと同じ叡智が二人の中に駈け廻《めぐ》った。
 やがて男は、女の機嫌を取るように、ぎごちなく一礼した。
 女も、一礼した。
 今度は、男は眼に熱情を籠めて、じーっと見入った。女は下態はそのままで、上態は七分通り水の方へ捩じ向け、ふくふく水溜りの底から浮く、泡の湧玉を眺めている
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