ち、島山の中央の断《き》れ目から島地の上へ平たく膨れ上っただけの山でした」
世の中は、ただうとうとと、あま葛の甘さに感じられた。ただひとりぽっちが寂しかった。
幼い青春が見舞った。「環境《わたり》」と「誰《た》」を感じた。突き上げて来た物恋うこころ。自らによって他を焼き度く希う情熱をはじめて自分は感じた。
自分は眩暈《めまい》がして裂けた。息を吹き返して気が付いたときに、自分は見る影もない姿に壊れていた。胸から噴き流れて凝った血が、岩となって二枚目の肋骨としてまわりに張っていた。
自分は泣く泣く砂礫を拾って、裸骨へ根気よく肉と皮を覆うた。
しばらく、爽かで湛えた気持の世の中が見廻わせた。自分は第二の青春を感じた。
同じく物恋うるこころ、それには、「疑い」と「恥かしさ」が、厚い殻となって冠っていた。それをしも押しのけて、自らによって他を焼き尽そう情熱、自分はまたしても眩暈《めま》いがした。裂けた。息を吹き返して気が付いたときに、自分は醜い姿に壊れていた。けれども自分の胸から噴き流れて凝った血は、三枚目の肋骨となって、まわりに張っていた。自分は泣く泣く砂礫を拾って裸骨へ根気よく
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