様とジャネットと私達二人一緒になってお店の商品を片っぱしから英仏独で呼び合いました。とても滑稽でしたわ。もう少しやればお客様に応待出来るでしょうと言われて大笑いよ。晩方ちょっと通りへ出ただけでした。
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六月二十四日 第七信(ベルリンにて)
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ママ、今日は早起きをしたの、五時にね。だってジャネットの学校を見せて貰うのだったから。ジャネットの学校はベルリンの西北隅に在る市立音響体操学校と言うの。女学校を卒業して一二年の間――結婚前のドイツ女子の希望者の為めに特に便宜を計って毎朝六時から八時頃まで色々の楽器――ピアノ、タンバリン、ヴァイオリンなどの音の強弱に合せて色々の体操をするのです。学生は大抵自転車で此の学校に駈けつけます。私達もちょっとやって見たくなりました。
今昼飯を食べた所なの。これからベルリン中央飛行場へドイツ最新型の尾の無い飛行機を見に行くの。ママ! 私はどうして斯うも飛行機が好きなんでしょう。――ママが身の痩《や》せる程私の飛行家になるのを恐れて居らっしゃるのに。私よく考えて見ますわ。
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六月二十五日 
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