。それから先は誰でも気に入った男と一緒になるがいゝ。」
――けど、あの娘、随分田舎|擦《ず》れがしてゝ仕立て憎いわね。」
――田舎擦れてゝも巴里擦れていない。中味は生の儘《まま》だね。まだ……だから巴里の砥石《といし》にかけるんだ。生《う》い/\しい上品な娘に充分なりそうだよ。」
[#ここで字下げ終わり]
 熟し切った太陽の下でセーヌ河のうす赫《あか》い土色の水が流れて居た。流れは箱型の水泳船の蔭へ来て涼しい蘆の中で小さい渦を沢山こしらえる。渦と渦と抱き合ってぴちょんぴちょんと音を立てる。「中の島」の基点になるポン・ド・グルネルの橋の突き出しに立っている自由の女神の銅像が炎天に※[#「赭のつくり/火」、第3水準1−87−52]《に》えて姿態《ポーズ》の角々から青空に陽炎を立てゝいるように見える。橋を日傘が五ツ六ツ駈けて行く。対岸の石垣の道の菩提樹の間に行列の色がゆらめく。予定が今日に伸びた女店員《ミジネット》の徒歩競争が通って行くのだ。一人一人叩いて行く太鼓の音がまばらに聞える。「中の島」を跨《また》いでいるポン・ド・パッシイの二階橋の階上を貨物列車が爽やかな息を吐きながらしず/\パッ
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