シイ街の方へ越えて行く。昨日の祭日の粗野な賑わいを追っ払ったあとから本然の姿を現わして優雅に返った巴里の空のところどころに白雲が浮いて居る。新吉の竿の先にもおもちゃのような小さい魚が一つ釣り上げられて、それでも魚並みに跳ねている。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――あなたも渋くなったわね。すっかり巴里を卒業したのよ。」
[#ここで字下げ終わり]
リサは感に堪えたように言った。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――どうしてだ。何を。」
――いままでのあなたの経験しなさったのはやっぱり追放人《エキスパトリエ》の巴里ね。誰でもすこし永く居る外国人が、感化される巴里よ。でも本当の巴里は其の先にあるのよ。噛んでも噛み切れないという根強い巴里よ。あなたはそれを噛み当て初めたのね。死んだフェルナンドは其の事を巴里の山河性と言ってましたよ。」
[#ここで字下げ終わり]
リサは編物をちょいと新吉の背中に当てがって寸法を見て、
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――ちょうどいゝ。これフェルナンドのを、あなたのジャケツに編み縮めてあげるのよ。」
[#ここで字下げ
前へ
次へ
全73ページ中70ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 かの子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング