のあったカテリイヌの体重さえも太陽に熱くなったズボンの下の膝に如実に感じられるのだった。そしてだん/\新吉は疲れて行った。
新吉は堪らなくなった。彼を無意識に疲れさすその面影から逃れるためには現実のカテリイヌが早く出て来て呉れるか、もっと違った強力な魅惑が彼の注意を根こそぎ奪うかして呉れるのでなければならなかった。新吉は早くこの二人の女に別れて、カテリイヌを探す為めに今日の巴里祭の雑沓の中を駆け廻りたいような衝動にかり立てられた。また心の一方ではあまり空漠とした欲望を広い巴里に持ちあぐむ自分にあきれ返って、やけに酒でも飲みに連れの二人を誘うと立止まった。
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――此の|老ぶれ《ビューコン》餓鬼!。」
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まだ初心《うぶ》な娘の声をわざと蓮《はす》ッ葉《ぱ》にはしらせてジャネットが一人の男に叫んでいるのだった。そして其の男の手に持っていた風船玉を引ったくった。男は風船玉を奪い返すようなふりをしながらジャネットの手首を掴え、それから強い力で自分の方へ、くるりと廻して左に抱えてしまった。
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