の巴里祭を見て行き度いために巴里に今年は残ったのでしょう。喰いとめなけりゃ気が済まないわ。とても、明日の巴里祭をあなたに面白くして奥さんの所へなんか帰さない工夫をしなければならないわ。それで明日はあたしあなたと一緒について巴里祭に行くつもりよ。お婆さんと一緒じゃお気の毒だけれど。然しこうなれば目茶よ。だからどうぞ其のおつもりでね。」
[#ここで字下げ終わり]
 夫人は冗談の調子で言って居るのだけれど、此の冗談には夫人の新吉への病的な関心が充分含まれて居るのだ。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――兎に角、明日は私とお遊びなさい。私あなたの自由に遊んで上げます。気に入った女が見つかれば一緒に歩いても上げますわ。」
[#ここで字下げ終わり]
 夫人はこれも決定的な本心を含めた冗談で言った。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――どうぞ、まあ、よろしくおたのみします。」
[#ここで字下げ終わり]
 新吉はつい弱気に言ってしまった。
[#ここから改行天付き、折り返して2字下げ]
――朝、お迎えに来るわ。」
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 夫人は遂々冗談を本当に仕上げて満足
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