声あって)
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×××『二人とも争うには及ばぬ。こちへ入れ。直ぐに夫婦にしてやろう』
源兵衛『そういう声は、父者の声』
おさき『親が許して夫婦の盃、御仏前でさすほどに、おくみ坊も早う、こなたへ入るがよいぞや』
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(裏の背戸開く)
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おくみ『これはまた、どうした運やら。たとえ狐狸の仕業《しわざ》とあっても、わたしゃ悦んで騙《だま》されよう。のう源兵衛さま』
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(源兵衛の手を取って背戸より入る)
(夜はしらじらと明け、暁の鐘が鳴る)
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     第三場

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(垂幕、湖水の漣《さざなみ》に配して唐崎の松の景。朝の渚鳥が鳴いている。
源右衛門と源兵衛旅姿で花道より出で来り、程よきところにて立止まる。)
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源右衛門『これ、忰、暫らくの間の故郷の見納め、この辺で一休みするとしようかい』
源兵衛『此の期《
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