取返し物語
岡本かの子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)彼方《あちら》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)只今|正定聚《しょうじょうしゅ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「二点しんにょう+台」、第3水準1−92−53]
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     前がき

 いつぞやだいぶ前に、比叡の山登りして阪本へ下り、琵琶湖の岸を彼方《あちら》此方《こちら》見めぐるうち、両願寺と言ったか長等寺と言ったか、一つの寺に『源兵衛の髑髏』なるものがあって、説明者が殉教の因縁を語った。話そのものが既に戯曲的であったので劇にしたらと思い付いて、其《その》後調べの序《ついで》に気を付けていると、伝説として所々に出ている。此のたび機会があったのでまとめてみた。伝説には三井寺はもっと敵役《かたきやく》になっているが、さまではと和げて置いた。
 一たい歌舞伎劇の手法は、筋の運び方と台詞《せりふ》のリズムに、原理性の表現主義を持っていて、ものに依っては非常に便利なも
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