くら》見てありとわれに驚く
わが婢《はした》なにおもふらむ廚辺《くりやべ》の桜花《はな》の樹《こ》のもとにあちらむき停《た》てり
この朝の桜花《はな》の樹《こ》のもと小心の与作《よさく》ものつ[#「のつ」に傍点]と歩み出でたり
わが幼稚《をさな》さひたはづかしし立ち優《まさ》り咲き揃《そろ》ひたる春花《はるはな》なれや
咲きこもる桜花《はな》ふところゆ一《ひと》ひらの白刃《しろは》こぼれて夢さめにけり
わがころも夜具《やぐ》に仕換《しか》へてつつましく掻《か》い寝《いね》てけり月夜《つくよ》夜ざくら
角《つの》立ちのみじかきからに牛の角《つの》つのだち行けどふれずさくらに
いみじくも枝垂《しだ》るるさくら日《ひ》の本《もと》の良子《ながこ》女王《によわう》が素直《なほ》きおん眉《まゆ》
可愛《かあ》ゆしといふわが言の畏《かし》こけれ桜花《さくら》見ますかわが良子ひめ
新しき家居《いへゐ》の門《かど》に桜花《はな》咲けど夜《よ》を暗み提灯《ちやうちん》つけて出《い》でけり
桜花《はな》さける道は暗けど一《いつ》しんに提灯ふりて歩みけるかも
わが持てる提灯の炎《ひ》は
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