体の感じ

散りかかり散りかかれども棕梠の葉に散る桜花《はな》ふぶき溜《たま》るとはせず

ならび咲く桜の吹雪《ふぶき》ぽぷらあ[#「ぽぷらあ」に傍点]の若芽《わかめ》の枝の枝ごとにかかる

わが庭の桜|日和《びより》の真昼なれ贈りこしこれのつやつや林檎《りんご》

青森の林檎の箱ゆつやつやと取り出《い》でてつきず桜花《はな》の樹《こ》のもと

林檎むく幅広《はばひろ》ないふ[#「ないふ」に傍点]まさやけく咲き満《み》てる桜花《はな》の影うつしたり

地震《なゐ》崩《くづ》れそのままなれや石崖に枝垂《しだ》れ桜は咲き枝垂れたり

しんしんと桜花《さくら》かこめる夜《よる》の家|突《とつ》としてぴあの[#「ぴあの」に傍点]鳴りいでにけり

しんしんと桜花《はな》ふかき奥にいつぽんの道とほりたりわれひとり行《ゆ》く

せちに行けかし春は桜の樹下《こした》みちかなしめりともせちに行けかし

さくら花ひたすらめづる片心《かたごころ》せちに敵《かたき》をおもひつつあり

朝ざくら討たば討《う》たれむその時の臍《ほぞ》かためけりこの朝のさくら

あだかたきうらみそねみの畜生《ちくしやう》が桜花《さ
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