岡本かの子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)生命《いのち》を

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)桜|日和《びより》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「ぽぷらあ」に傍点]
−−

桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命《いのち》をかけてわが眺《なが》めたり

さくら花《ばな》咲きに咲きたり諸立《もろだ》ちの棕梠《しゆろ》春光《しゆんくわう》にかがやくかたへ

この山の樹樹《きぎ》のことごと芽ぐみたり桜のつぼみ稍《やや》ややにゆるむ

ひつそりと欅《けやき》大門《だいもん》とざしありひつそりと桜咲きてあるかも

丘の上の桜さく家《いへ》の日あたりに啼《な》きむつみ居《を》る親豚子豚

ひともとの桜の幹《みき》につながれし若駒《わかごま》の瞳《め》のうるめる愛《かな》し

淋しげに今年《ことし》の春も咲くものか一樹《ひとき》は枯《か》れしその傍《そば》の桜

春さればさくらさきけり花蔭《はなかげ》の淀《よど》の浮木《ふぼく》の苔《こけ》も青めり

ひえびえと咲きたわみたる桜花《はな》のしたひえびえとせまる肉
次へ
全12ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 かの子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング