あなたを『素焼の壺』のようなあっさりした方と云いましたけど……私はそれ以上あなたにお目にかかっていると、しん[#「しん」に傍点]と寂しさが身に迫るようでした。時々堪らなく寒くなるような感じをうけます」
「男性と女性の相違ですよ。兄さんとあなたと僕に対する感じ方の違うというのは」
「何がですか」
「だから僕は女性でなくては……と云ったでしょう」
「…………」
 かの女はあまり唐突にその言葉を聞いたように感じた。だがよく考えれば、青年がいつも女性でなければと云っていたことを、今また思い出した。
「僕はやっぱり女性の敏感のなかに理解がしっとり緻密に溶け込んでいるのでなければ、淋しい男性にとってほんとうの喜びではないと思うんです。兄さんは僕を多少ニヒリストで素焼の壺程度にさらりとした人間と解釈したに過ぎないが、あなたはそれ以上、僕に鬱屈している孤独的な寂しさまで感じわけて下さったでしょう……女性の本当に濃かいデリケートな感受性へ理解されることが、僕の秘かな希望だったんだな……」
「でもあなたは素焼の壺が二つ並んだような男女の交際が欲しいと仰ったでしょう」
「またそれが出ましたね。どうも素焼の壺
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