のような俵形にこんもり形を盛り直している。
 耳の注意を振り向けるあらゆるところに、潺湲《せんかん》の音が自由に聴き出され、その急造の小|渓流《けいりゅう》の響きは、眼前に展開している自然を、動的なものに律動化し、聴き澄している復一を大地ごと無限の空間に移して、悠久に白雲上へ旅させるように感じさせる。
 もろもろの陰は深い瑠璃色《るりいろ》に、もろもろの明るみはうっとりした琥珀色《こはくいろ》の二つに統制されて来ると、道路側の瓦《かわら》屋根の一角がたちまち灼熱《しゃくねつ》して、紫白《しはく》の光芒《こうぼう》を撥開《はっかい》し、そこから縒《よ》り出す閃光のテープを谷窪のそれを望むものものに投げかけた。
 鏡面を洗い澄ましたような初秋の太陽が昇ったのだ。小鳥の鳴声が今更賑わしく鮮明な空間の壁絨《へきじゅう》をあっちへこっちへ縫いつつ飛ぶ。
 極度の緊張に脳貧血を起していったん意識を喪《うしな》い、再び恢復して来たときの復一の心身は、ただ一|箇《こ》の透明《とうめい》な観照体となって、何も思い出さず、何も考えず、ただ自然の美魅そのままを映像として映しとどめ、恍惚そのものに化していた。
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