、びくりとするが、その神経の脅えは薬力に和《なご》められて、かえって、すぐその後は眠気を深めさせる。復一はベッドに仰向けに両肘を突っ張り、起き上ろうとする姿勢のまま、口と眼を半開きにしてしばらく鼾《いびき》をかいていた。ようやく薬力が薄らいで、復一が起き上れたのは、明け方近くだった。
雨は止んで空の雲行は早かった。鉛色《なまりいろ》の谷窪の天地に木々は濡《ぬ》れ傘《がさ》のように重く搾《すぼ》まって、白い雫《しずく》をふしだらに垂らしていた。崖肌は黒く湿って、またその中に水を浸み出す砂の層が大きな横縞《よこじま》になっていた。崖端のロマネスクの休亭は古城塞《こじょうさい》のように視覚から遠ざかって、これ一つ周囲と調子外れに堅《かた》いものに見えた。
七つ八つの金魚は静まり返って、藻や太藺《ふとい》が風の狼藉の跡に踏みしだかれていた。耳に立つ音としては水の雫の滴《したた》る音がするばかりで、他に何の異状もないように思われた。魯鈍《ろどん》無情の鴉《からす》の声が、道路傍の住家の屋根の上に明け方の薄霧《うすぎり》を綻《ほころ》ばして過ぎた。
大溝の水は増したが、溢れるほどでもなく、ふ
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