ると思って賛成しなかったのよ。まして、ロココに進むなんて一層人工的ですよ。趣味として滅亡の一歩前の美じゃなくって」
「でも、どうしてもそうしたくって仕方がないのよ」
「真佐子さん、あなたは変ってるわね」
「そうかしら。あたしはあなたがいつかわたしのことおっしゃったように、実際、蒼空と雲を眺めていて、それが海と島に思えると云った性質でしょうね」
復一はそっと庭へ降りて来て、目だたぬ様に軒伝《のきづた》いに夕暮近い研究室へ入った。復一はそこの粗末な椅子によってじっと眼を瞑《つむ》った。彼は近頃ほとんど真佐子と直接逢ってはいない。今日のように真佐子が中祠堂に友人と連れ立って来ても子供や夫と来てもほとんどそこで云う真佐子達の会話は聞き取れない。だが復一は遠くからでも近頃の真佐子のけはいを感じて、今は自分に托した金魚の事さえ真佐子は忘れているかも知れない、真佐子はますます非現実的な美女に気化して行くようで儚《はか》ない哀感が沁々と湧くのであった。
蘭鋳から根本的に交媒を始め出した復一はおよその骨組の金魚を作るのに三年かかった。それから改めて、年々の失敗へと出立した。
「日暮れて道遠し」
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