を見ずに年も越え、梅の咲く頃に、彼女の姿を始めて見た。また子を産んで、水を更えた後の藻《も》の色のように彼女の美はますます澄明《ちょうめい》と絢爛を加えた。復一が研究室に額にして飾っておく神魚華鬘の感じにさえ、彼女は近づいたと思った。今日は真佐子は午後から女詩人の藤村女史とロマネスクの休亭に来ていた。二人の女は熱心に話し合っている。枯骨《ここつ》瓢々《ひょうひょう》となった復一も、さすがに彼女等が何を話すか探りたかった。夕方近くあかこ[#「あかこ」に傍点]を取ることを装《よそお》って、復一はこそこそと崖の途中の汚水の溜りまで登って、そこで蹲《うずくま》った。彼は三十前なのに大分老い晒《さら》した人のような身体つきや動作になっていた。二人の婦人が大分前から話しつづけていた問題だったらしい。けれど復一のところまでははっきり聞えて来なかった。実はそこで藤村女史と真佐子との間に交されている会話の要点はこんなことなのである……真佐子が部屋をロココに装飾し更えようと提議するのに藤村女史は苦り切った間らしいものを置いて、
「四五年前にあなたがバロックに凝《こ》ったさえ、わたしは内心あんまり人工的過ぎ
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