の遣り繰りの相手になっていた銀行は休業したまま再開店は覚束ないと噂された。
「復一君の研究費を何とか節約してもらえんかね、とさすが鼎造のあの黒い顔も弱味を吹いたよ」
 年寄は、結局、復一の研究費は三分の一に切詰めることを鼎造に向って承知して来たにも拘《かかわ》らず、鼎造の窮迫《きゅうはく》を小気味よげに復一に話した。
 それを他人事のように聞き流しながら、復一は関西から届いた蘭鋳の番《つが》いに冬越しの用意をしてやっていた。菰《こも》を厚く巻いてやるプールの中へ、差し込む薄日に短い鰭と尾を忙しく動かすと薄墨の肌からあたたかい金爛の光が眼を射て、不恰好なほどにも丸く肥えて愛くるしい魚の胴が遅々として進む。復一は生ける精分を対象に感じ、死灰の空漠を自分に感じ、何だか自分が二つに分れたもののように想えて面白い気がした。復一は久し振りに声を挙げて笑った。すると宗十郎が背中を叩いて云った。
「びっくりするじゃないか。気狂《きちが》いみたいな笑い方をして、いくら暢気《のんき》なおれでも、ひやりとしたよ」

 年の暮も詰ってから真佐子に二番目の女の子が生れたという話で、復一は崖上の中祠堂に真佐子の姿
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