上り、鼻筋が通って、ちょっと頬骨が高く男性的の人体電気の鋭そうな、美青年の紳士《しんし》であった。ある日曜日の朝のうち真佐子と女の子を連れて、ロマネスクの茶亭へ来て、外字新聞を読んだりしていた。その時すぐ下の崖の中途の汚水の溜りから金魚の餌のあかこ[#「あかこ」に傍点]を採って降りようとした復一がふとそこを見上げたが、復一はそれなり知らぬ振りでさっさと崖を降りてしまった。それを見た真佐子はそこに夫と居ながら、二人一緒に居るのが何だかうしろめたかった。
「いいじゃないか。なぜさ」
と夫は無雑作に云った。
「だって、ここで二人並んで居るのをどこからでも見えるでしょう」
と真佐子は平らに押した。
「どうして君とおれと、ここに居るのが人に見えて悪いのかね」
夫の言葉には多少嫌味が含んでいるようだ。
「何も悪いってことありませんけど、谷窪の家の人達から見えるでしょう。あの人まだ独身なんですもの」
「金魚の技師の復一君のことかね」
「そうです」
すると夫はやや興奮して軽蔑的に
「君もその人と結婚したらよかったんだろう」
すると真佐子は相手の的から外れて、例の漂渺とした顔になって云った。
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