盟《インデアンフリーダムリーグ》の枝隊が圧進して来る。張りついたやうに揃つた隊列を横から見ると一つ躯幹になつたが五六本の赭黒い足を力強く一時に踏み出す。印度人は復讐を遂げるまでは決して笑はない。英国本の伝奇小説にはよくかういふことが書いてある。その真否は別として今眼の前を過ぎる枝隊の先頭に立つサクラトヴァラの顔には少くともまだ当分笑ひを予約すまいといふ厳しい固めがある。
Long live Sakulatvala !
見物群のなかから殖民地訛の多い声がかう叫びかける。彼はバッタシーの前共産党代議士で組織者として有名だ。
行進が殖民地官省のある町を通つた時この枝隊は特に意味を持つた。
皮肉《アイロニー》だ。皮肉だ。
皮肉好きの英人の見物は羊皮製の顔に血の気を浮べて頷き合ふ。この日のために特に刷つた赤字のビラやパンフレット、この日の見物に売捌かうと抱へて来た労働新聞を傍列の赤シャツや黒ヅボンが両側の人波へさあさあ[#「さあさあ」に傍点]と撒く。紳士は巻煙草の広告のやうに婦人連は百貨店の衣裳の宣伝ビラをうけとめるように至極悠長な受け渡しだ。代金をあとから筒で取りに来る。慈善事業の寄
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