英国メーデーの記
岡本かの子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)行列《プロセッション》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)最貧民街|東端倫敦《イーストロンドン》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)はうはい[#「はうはい」に傍点]
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倫敦に於ける五月一日は新聞の所謂「赤」一党のみが辛うじてメーデーを維持する。
それさへ華やかに趣向を凝らし警戒の巡査と諧謔を交しながらの祝賀気分だ。われわれが世界共通のものとしてメーデーを概念してゐるところの合成人間の危険性を内包した黙圧もしくは爆叫には殆ど出逢へないと云つて宜しい。
これは無産階級風に描かれたニースの花祭だ。市長就任式の行列《プロセッション》が新市長と官飾《デコレーション》を連れ忘れただけだ。ランカシヤの工服を着た象牙画《ミニヤチュア》のやうな少女が荷馬車《ホースドロウヴァシ》の上で笑顔をつくつて叫ぶ。
Down with the British Empire(大英国を倒せ)とシークな事よ。行人の拍手。
英国では伝統を破らうとするものは軈て伝統に捉へ
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