覚した。すると私は早く日本の叔母の元へ帰り、また、物語を書き継ぐ忍従の生活に親しみ度《た》い心のコースが自然私に向いて来た。
 私たちからは内地の話や、男からは南洋の諸国の話が、単なる座談として交わされた。社長は別室へ酔後の昼寝をしに行った。
 この土地常例の驟雨《スコール》があって後、夕方間近くなって、男は私だけに向って、
「ちょっとその辺を散歩しましょう。お話もありますから」と云った。
 私は娘の顔を見た。娘は「どうぞ」と会釈した。そこで私は男に連立って出た。雨後すぐに真白に冴《さ》えて、夕陽に瑩光《えいこう》を放っている椰子林《やしりん》の砂浜に出た。
 スコールは右手の西南に去って、市街の出岬の彼方の海に、まだいくらか暗沫《あんまつ》の影を残している。男はその方を指して「こっちはスマトラ」それからその反対の東南方を指して「こっちはボルネオ」、それから真正面の青磁色の水平線に、若い生姜《しょうが》の根ほどの雲の峯を、夕の名残《なご》りに再び拡《ひろ》げている方を指して、「ずーっと、この奥に爪哇《ジャバ》があります。みな僕の船の行くところです」
 彼は一本の椰子の樹の梢《こずえ》を
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