さない――男もいじらしそうに、娘の眼を柔かく見返していた。
 社長もすべての疎通を快く感ずるらしく、
「これで顔が揃《そろ》った。まあ祝盃として一つ」などとはしゃいだ。
 私はふと気がつくと、娘と男から離れて、独り取り残された気持ちがした。こちらから望んで世話に乗り出したくらいだから、利用されたというような悪毒《あくど》く僻《ひが》んだ気持ちはしないまでも、ただわけもなく寂しい感じが沁々《しみじみ》と襲った。――この美しい娘はもう私に頼る必要はなくなった。――しかし、私はどんな感情が起って不意に私を妨げるにしても自分の引受けた若い二人に対する仕事だけは捗取《はかど》らせなくてはならないのである。私は男に、
「それで、結婚のお話は」
 ともう判り切って仕舞ったことを形式的に切り出した。すると男はちょっとお叩頭《じぎ》して、
「いや、私の考がきまりさえしたら、それでよろしいんでございましょう。いろいろお世話をかけて申訳ありません」といった。
 娘は私に向って、同じく頭を下げて済まないような顔をした。
 もはや、完全に私は私の役目を果した。二人の間に私の差挟まる余地も必要もないのをはっきり自
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