れ、同時に、彼女から放射する電気のようなものを私は感じた。私は彼女が気が狂ったのではないかと、怖《おそ》れながら肩の痛さに堪えて、彼女の気色を覗《うかが》った。自分でも気がつくくらい、私の唇も慄えていた。
男は席につくと、私に簡単に挨拶《あいさつ》した。
「木下です。今度は思いがけないご厄介をかけまして」と頭を下げた。
それから社長に向って
「いや、あなたにもどうも……」これは微笑しながらいった。
娘は座席に坐《すわ》り直して、ちょっとハンケチで眼を押えたが、もうそのときは何となく笑っている。始めて男は娘に口を切った。
「どうかしましたか」それは決して惨《むご》いとか冷淡とかいう声の響ではなかった。
「いいえ、あたし、あんまり突然なのでびっくりしたものだから……」そして私の方を振り向いて、「でも、すべて、こちらがいて下さるものですから」と自分の照れかくしを仕乍《しなが》ら私に愛想をした。
娘は直《じ》きに悪びれずに男の顔をなつかしそうにまともに見はじめた。だが何気ないその笑い顔の頬《ほお》にしきりに涙が溢《あふ》れ出す。娘はそれをハンケチで拭《ぬぐ》い拭《ぬぐ》い男の顔に目を離
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