つしの》ぎにここへ昼寝する積りで来てたんだが……」ひょっとするとここへ廻《まわ》るかも知れないとも思った。なにしろ新嘉坡へ来る内地の客の見物場所はきまっているからと云って男は朗に笑った。
 私は男がこの座敷へ近寄って来る僅《わず》か分秒の間に、男の方はちらりと一目見ただけで、娘の態度に眼が離せなかった。
 彼女は男が、娘や私たちを認めて、歩を運び出した刹那《せつな》に、「あたし――」といって、かなりあらわに体を慄《ふる》わして、私の肩に掴《つかま》った。その掴り方は、彼女の指先が私の肩の肉に食い込んで痛いくらいだった。ふだん長い睫毛《まつげ》をかむって煙っている彼女の眼は、切れ目一ぱいに裂け拡《ひろ》がり、白眼の中央に取り残された瞳は、異常なショックで凝ったまま、ぴりぴり顫動《せんどう》していた。口も眼のように竪《たて》に開いていた。小鼻も喘《あえ》いで膨らみ、濃い眉《まゆ》と眉の間の肉を冠《かぶ》る皮膚が、しきりに隆まり歪《ゆが》められ、彼女に堪え切れないほどの感情が、心内に相衝撃するもののように見えた。二三度、陣痛のようにうねりの慄えが強く、彼女の指先から私の肩の肉に噛《か》み込ま
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