れが水天一枚の瑠璃色《るりいろ》の面でしばしば断ち切れて、だんだん淡く、蜃気楼《しんきろう》の島のように中空に映り霞《かす》んで行く。たゆげな翼を伸した鳥が、水に落ちようとしてたゆたっている。
昼前に新嘉坡《シンガポール》の郊外のカトン岬の小さな桟橋についた。娘の待つ男の船は、今夜か明朝、新港に着く予定であった。
「まだ時間は大丈夫だ。ゆっくりして行きましょう。この辺もチャンギーと云って、新嘉坡の名所の一つで、どうせ来なくちゃならんところだ」社長はそういって、海の浅瀬に差し出してある清涼亭という草葺《くさぶ》き屋根の日本人経営の料亭へ、私たちを連れて行き、すぐ上衣を脱いだ。
「まあいい所ね」
私も娘も悦《よろこ》んだ。この辺の砂は眩《まぶし》いくらい白く、椰子《やし》の密林の列端は裾《すそ》を端折《はしょ》ったように海の中に入っている。
亭の前の崖下《がけした》は生洲《いけす》になっていて、竹笠《たけがさ》を冠《かぶ》った邦人の客が五六人釣をしている。
汐時のすこし湿っぽい畳の小座敷で、社長は無事見学祝いだとか、何とか云っては日本酒の盃を挙げている。海の匂《にお》いと酒の匂いが
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