妓《げいぎ》が二人とお雛妓《しゃく》が一人現れた。
部屋の主《あるじ》は私女一人なのに、外来の女たちはちょっと戸惑ったようだが、娘が紹介すると堅苦しく挨拶《あいさつ》して、私が差出した小長火鉢にも手を翳《かざ》さず、娘から少し退って神妙に座った。いずれもかなりの器量だが、娘の素晴らしい器量のために皺《しわ》められて見えた。
娘は私には「この人たち宴会場から送って来て呉れたのですけれど、筆をお執りになる方には何かのご経験と思いついて、ちょっとお部屋へ上って貰いましたの」といった。
少しの間、窮屈な空気が漂っていたが、娘は何も感じないらしく、「みなさん、こちらに面白そうなことを少し話してあげて下さい」というにつれ、私も、「どうぞ」と寛《くつろ》いだ様子を出来るだけ示したので、女たちは、「じゃ、まず、一ぷくさせて頂いて……」と袂《たもと》からキルク口の莨《たばこ》を出して、煙を内端に吹きながら話した。
今までいた宴会の趣旨の船の新造卸しから連想するためか、水の上の人々が酒楼に上ったときの話が多かった。
船に乗りつけている人々はどんなに気取っても歩きつきで判るのである。畳の上ではそれ
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