なろうと試み、木下がさっぱりした性格を好むと思い取っては、男のようになって働きもした。木下は迷ってすることだが、娘はただ懸命につき従おうと心を砕いた。
「結局あの娘の持ち前の性格をくたくたに突き崩して、匂《にお》いのないただ美しい造花のようにしてしまったのは、僕の無言の折檻《せっかん》にあるのでしょう。それとも女というものは、絆《きずな》のある男なら誰に対しても遂《つい》にそうなる運命の生物なのでしょうか」
青年の木下は、それを憐《あわれ》みながら、いよいよ愛する娘を持て剰《あま》した。
「けれども、海は、殊に、南洋の海は……」と木下は言葉を継いだ。「海は、南洋の海は……」現実を夢にし、夢を現実にして呉《く》れる、神変不思議の力を持っている。むかし印度《インド》の哲学詩人たちが、ここには竜宮というものがあって、陸上で生命が屈托《くったく》するときに、しばらく生命はここに匿《かく》れて時期を待つのだといった思想などは、南の海洋に朝夕を送ってみたものでなければ、よく判らないのである。ここへ来ると、生命の外殻の観念的なものが取れて、浪漫性の美と匂いをつけ、人間の嗜味に好もしい姿となって、再
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