び立ち上って来るとかいうのである。
「あなたは東洋の哲学をおやりだという話を、あれの手紙で知りましたが、それなら既にお気付きでしょう。およそ大乗と名付けられる、つまり人間性を積極的に是認した仏教経典等には、かなりその竜宮に匿れていたのを取出して来たという伝説が附ものになっていましょう。その竜宮を、或は錫蘭《セイロン》島だといい、いや、架空の表現なのだとか、いろいろ議論がありますものの、大体北方の哲学の胚種《はいしゅ》が、後世文化の発達した、これ等南の海洋の気を受けた土地に出て来て、伸々と芽を吹き、再生産されたことは推測されましょう」
木下はなお南洋の海に就《つ》いて語り続ける。
 遠い水は瑠璃色《るりいろ》にのして、表面はにこ[#「にこ」に傍点]毛が密生しているように白っぽくさえ見える。近くに寄せる浪のうねりは琅※[#「王+干」、第3水準1−87−83]《ろうかん》の練りもののように、悠揚と伸び上って来ては、そこで青葉の丘のようなポーズをしばらく取り、容易には崩れない。浪間と浪の陰に当るところは、金沙《きんさ》を混ぜた緑礬液《りょくばんえき》のように、毒と思えるほど濃く凝って、しかもき
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