の二重の矛盾に堪え切れないで、娘に辛く当ったり、娘をはぐらかして見たり、軽蔑《けいべつ》してみたり、あらゆるいじけた情熱の吐き方をしたものです。そうしたあとでは、無垢《むく》な、か弱いものを惨忍に踏み躙《にじ》った悔いが、ひしひしと身を攻めて来て、もしやこのことのために娘の性情が壊れて仕舞ったら、どうしたらいいだろう……」
 彼が学問で身を立てるつもりで堺屋の主人に頼んで、段々と上の学校へ上げて貰おうとしたのは、学問の純粋性が彼に沁《し》み込んで、それによって世の中を見るようになれば、女の持つ技巧や歪曲《わいきょく》の世界から脱れようかとも思った。ところが、彼が青年になり、青春の血が動くようになるほど、娘のことを考え、この自分の矛盾に襲われ、結局しどろもどろになって、落付いて学問なぞしていられず、娘を愛しながら、娘の傍にはいたたまれなくなって来た。そうかといって、他の女はもっと女臭いものが、より多くあるような気がして女がふつふつ嫌であった。
 とうとう彼は二十一の歳に高等学校をやめて、船に乗り込んで仕舞った。
 娘は何も知らずに、木下がやさしい性情が好きなのだと思い取っては、そのように
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