、あれをあの方は、こんな粗末《そまつ》なものを貰《もら》ったって何にもなりゃしないって蔭口《かげぐち》云《い》ってましたよ。」などと告《つ》げる第三者があるとします。
この場合氏は、
「折角《せっかく》やったのに失礼な。」
などとは云わずに、
「そうかい。いや、今度はひとつ、あいつの気に入る様《よう》なのをやることにしようよ。」と云った調子です。
また、他人が氏を侮蔑《ぶべつ》した折など、傍《はた》から、
「あなたはあんなに侮蔑されても分《わか》らないのですか。」など歯がゆがっても、
「分って居るさ、だけど向《むこ》うがいくらこっちを侮蔑したって、こっちの風袋《ふうたい》は減りも殖《ふ》えもしやしないからな。」と、平気に見えます。
また、男女間の妬情《とじょう》に氏は殆《ほとん》ど白痴《はくち》かと思われる位《くらい》です。が氏とて決して其《それ》を全然感じないのではない相《そう》ですが、それに就《つ》いて懸命《けんめい》になる先に氏は対者《あいて》に許容を持ち得るとのことです。一面から云《い》えば氏はあまり女性に哀惜《あいせき》を感ぜず、男女間の痴情《ちじょう》をひどく面倒《め
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