岡本一平論
――親の前で祈祷
岡本かの子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)面白い画《え》を
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)其《その》他|独歩《どっぽ》とか
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)いい[#「いい」に傍点]気
−−
「あなたのお宅の御主人は、面白い画《え》をお描《か》きになりますね。嘸《さぞ》おうちのなかも、いつもおにぎやかで面白くいらっしゃいましょう。」
この様《よう》なことを私に向《むか》って云《い》う人が時々あります。
そんな時私は、
「ええ、いいえ、そうでもありませんけど。」などと表面、あいまいな返事をして置きますが、心のなかでは、何だかその人が、大変見当違いなことを云って居《い》る様な気がします。もちろん、私の家にも面白い時も賑《にぎ》やかな折も随分《ずいぶん》あるにはあります。
けれど、主人一平氏は家庭に於《おい》て、平常、大方《おおかた》無口で、沈鬱《ちんうつ》な顔をして居ます。この沈鬱は氏が生来《せいらい》持つ現世に対する虚無思想からだ、と氏はいつも申します。
以前、この
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