とりませんが、小供《こども》や、無智《むち》な者などに露骨《ろこつ》なワイルドな強欲《ごうよく》や姦計《かんけい》を見出《みいだ》す時、それこそ氏の、漫画的興味は活躍《かつやく》する様に見えます。氏の息《むすこ》のまれに見るいたずらっ子が、悪《あく》たれたり、あばれたりすればする程《ほど》、氏は愛情の三昧《ざんまい》に這入ります。
氏はなかなか画《え》の依頼主に世話をやかせます。仕事の仕上げは、催促《さいそく》の頻繁《ひんぱん》な方《かた》ほど早く間に合わせる様です。催促の頻繁な方|程《ほど》、自分の画を強要《きょうよう》される方であり、自分に因縁《いんねん》深い方であると思い極《き》めて、依頼の順序などはあまり頭に這入《はい》らぬらしいのです。
終《おわ》りに氏の近来《きんらい》の逸話《いつわ》を伝えます。
氏の家へ半月程前の夕刻|玄関《げんかん》稼《かせ》ぎの盗人が入りました。ふと気が付いた家人《かじん》は一勢《いっせい》に騒ぎ立てましたが、氏は逃げ行く盗人の後姿《うしろすがた》を見る位《くらい》にし乍《なが》ら突立《つった》ったまま一歩も追おうとはしませんでした。家人が詰問
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