てマヨネーズソースをつけて食べる。伊勢蝦《いせえび》よりもっと味が細かい。芝《しば》蝦より稍々《やや》大きいラングスチンと呼ぶ蝦は鋏《はさみ》を持っている。鋏を持っている蝦は一寸《ちょっと》形が変《かわ》っていて変だが、これがまたなかなかうまい。殊《こと》にオリーブ油で日本式の天麩羅《てんぷら》にするといい。
 日本は四方《しほう》海に囲まれているから海の幸《さち》は利用し尽《つく》している筈《はず》だが、たった一つフランスに負けていることがある。それは烏貝《からすがい》がフランス程《ほど》普遍的な食物になっていないことだ。日本では海水浴場の岩角にこの烏貝が群《むらが》っていて、うっかり踏付《ふんづ》けて足の裏を切らないよう用心しなければならない。あんなに沢山《たくさん》ある貝が食べられないものかと子供の時によく考えたことだが、それがフランスへ行って、始めて子供の時の不審《ふしん》を解決することが出来た。烏貝はフランス語でムールと云う。このムールのスープは冬の夜など夜更《よふか》しして少し空服《くうふく》を感じた時食べると一等いい。

 日本に始めて渡来した西洋料理がポークカツレツ――
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