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――あの娘と知り合いになる程の者はみんな恋人でしょうな。しかし本当の恋人になり得る者は誰でしょうな。私が二十年間、カジノの切符台から女を見た経験から云いますと、あの娘さんはまず見て味う女でしょうな。あまり深入りするとまあ身の破滅というたち[#「たち」に傍点]の女でしょうな。
[#ここで字下げ終わり]
小田島は何のことやら判らないで云った。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
――御忠告有難う。兎《と》も角《かく》、イベットに会って来ましょう。
[#ここで字下げ終わり]
小田島のイベットに対する怒りはもう消えて居た。彼はしみじみとした気持ちでイベットに逢うため崖に付いた一筋の道を寺の方へ降りて行った。
七
寺の役僧に礼を云ってイベットは小さい手帳を乗馬服の内隠しに仕舞った。それから役僧の姿が祭壇の横の扉に隠れたのを見届け小田島に近寄って来た。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
――よくお出掛けになってね。私も急にあなたにお目にかかり度い事情が出来たの。けど先刻ホテルに帰って聞いた時お部屋は閉ってあなたはまだ寝てらしった
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