ねい》な中に強い歯止めのかかって居る老人の取扱いに女は暴れても仕方が無かった。
小田島はいよいよ女から逃げ度くなった。隙をねらって急いで酒場の扉口を出ると女はあたふた追って来た。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
――あたしは、あんたを東洋迄も追馳けるよ。誰がイベットに渡すもんか。
[#ここで字下げ終わり]
賭博場を取巻く角や菱形に区切られた花園は夜露に濡れ、窓から射す燈に照らされ、ゴムを塗った造花の様に煌《きら》ついて居る。その中を歩き乍らいくら小田島が振り除けても女は離れて行こうとし無い。果《はて》は芝生に大の字形に寝て仕舞い、片手を伸ばして彼のズボンの裾をしっかり握って離さない。彼の癇癪《かんしゃく》は遂々爆発した。彼は女を引起すのに残酷とは知り乍ら、多少心得のある柔道の手を用いた。すると女はけろりとして起き上り、今度は彼の肩へ吊り下った。
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
――不思議、々々々。もっとやってよ。あたしこんな所痛むの始めて、好い気持ちよ。
[#ここで字下げ終わり]
小田島はしんから困った。疲れて頭がぼんやりして来た。女は女で遂々酔いが極
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