二つ彼女の長い睫を軽く瞬《またた》かせる。
この料理店自慢の鳥に詰物をした料理を給仕男が持って来たが、こういう卓上風景には馴れて居るので音を立てぬようにそっと行って仕舞った。
子供が乳房を吸って仕舞ったあとのようなぽかんとした顔をして、イベットはやがて男の腕から顔を上げた。
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――あなた、カジノの賭博から、フランス政府はいくら取上げるのだと思って?
――知らないね。
[#ここで字下げ終わり]
小田島は経済学を専攻して居てもまだ賭博に就《つい》ての研究はしてなかった。
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――カジノでやる賭博で、「シュマン・ド・フェル(賭博の一種)」は五パーセント、カジノでテラ銭を取るのよ。その五パーセントの中からフランス政府は三パーセント取るのよ。それから「バカラ」では親元がはねる手数料三千フランずつに就て政府は六十五パーセントずつ取るのよ。一寸考えても御覧なさい。随分大きいでしょう。
――成程《なるほど》ね。大きいや。
[#ここで字下げ終わり]
小田島は驚いた。彼もフランスの財政が賭博税で補われて居る位はう
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