れて居た。
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――ミスター・ロウが描いて呉れたんですよ。あのイヴニング・スタンダード紙の。似て居ますか?」
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流石《さすが》に印度女達は黙ってしまった。そして今までの突飛な高調した態度とは打って変って極めて常識的な地味な女達になってお互いにこそこそ用事の話を始めた。
此の有名な漫画家の描いた文豪の似顔画はあまり出来のいいものではなかった。臆した堅苦しい写生の上に無理に戯画的のものをつけ加えたちぐはぐの部分が景子達にも判った。
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――すこし老《ふ》けて描いてはございませんか」
[#ここで字下げ終わり]
ガルスワーシーは額を自分の手に引取り見直したのち、
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――左様。そう言えば、そうですね。多分私の苦労した方面をロウ君が捉えたのでしょう」
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そう言って笑った。
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――此のロウ君はですね、濠洲生れの男でしてね。線と簡単化ということでは沢山東洋的のものを持ってるよう
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