ネ。田打櫻《タウヂざくら》の花《ハナコ》でも、蕗臺《バキヤタヂ》の花《ハナコ》でも、彼處《アコ》の田畔《タノクロ》ガラ見れバ好《エ》エ花見《はなみコ》だデバせ。弘前《フロサギ》の公園地《こうゑんち》の觀櫻會《くわんあうくわい》だけヤエにお白粉《しろい》臭《カマリコ》アポツポドするエンタ物で無《ネエ》ネ。フン! 二十六《にじふろく》の夫《オド》有《も》タテ何ア目ぐせバ。吾《ワ》だケエに十年も後家《ごけ》立デデせ、他《ホガ》の家《エ》ガら童《ワラシ》貰《もら》て藁《わら》の上ララ育《そだ》デデ見デも、羸弱《キヤな》くてアンツクタラ病氣ネ罹《トヅガ》れデ死なれデ見れば、派立《ハダヂ》の目腐《めくさ》れ阿母《アバ》だケヤエに八十歳《ハチヂウ》の身空《みそら》コイデ、カダル孫《マゴ》にも嫁《よめ》にも皆死なれデ、村役場ガラ米《コメコ》だの錢《ジエンコ》だの貰《もら》て、厩《ムマヤ》よりも又《マダ》汚《きたね》エ小舍《コヤコ》サ這入《ハエ》テセ、乞食《ホエド》して暮らす風《ふ》ア眼《マナグ》サ見《メ》デ來るデバ。フン! 他人《フト》に辛口《カラグヂ》きグ隙《シマ》ネ自分の飯《めし》の上の蠅《ハイ》
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