まもり、その後ふと眼を轉じて、あの孔雀石と翡翠とで明暗を隈《くまど》つた半島を見まもつた。そして太陽の光線のために無論視線の彎曲されてゐるのを自覺して、實際の映象中の岬の突端を實在の突端へと想像に描きながら、その往日《むかし》そこの斷崖《ガンケ》を攀《よ》ぢて此方の灣《いりうみ》の岸を見かへしたことがある、私の十六の春を回想した。
百姓女《ジヤゴヲナゴ》の醉つぱらひ
汝《ンガ》の夫《オド》ア何歳《ナンボ》だバ。吾《ワイ》のナ今歳《コドシ》二十六だネ。何《なに》、笑《わら》ふんダバ。汝《ンガ》の阿母《オガ》の姉《あね》ダテ二十歳《ハダヂ》も下《した》の男《ヲドゴ》有《も》たけアせ。吾《ワ》だけアそれ程《ほど》違《チガ》はねエネ。ンヤ好《エ》デヤなア、雪《ユギ》ア解《と》ゲデセエ、鯡《ニシ》ゴト日當《ひあダ》りの屋根《ヤネ》サ干すエネ成《な》れば田《タコ》ア忙《エそ》がしグ成《な》テ、夫《オド》と晝間《シルマ》まで田《タコ》掻廻《カマ》して、それガラ田畔《タノクロ》サあがテせ、飯《ママ》も喰《ク》ば、酒《サゲ》も藥鑵《ヤガンコ》サ入《エ》れダノゴト二人で仲《ナガ》よグ飮《の》むア
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