ホロガネガ。十年も後家立デデ、彼方《アヂ》の阿母《オガ》だの此方《コヂ》の阿母《オガ》だのガラ姦男《マオドコ》したの、夫《オド》ゴト盜《ト》たド抗議《ボコ》まれデ、年ガラ年中|肝《きも》焦《や》ガヘデだエ何なるバ。若《ワガ》フたつて吾《ワ》ゴト好ギだテ言《ユ》ハデ連《つ》れダ夫婦《フフ》だネ。十年も死んだ夫《オド》サ義理立デデ、この上なに辛口《カラグヂ》きガれるゴドアあるベナせ。蠅《はい》ホロゲ、汝《ンガ》の飯《めし》の上の蠅《はい》ホロゲ、はゝゝゝゝゝ。ンヤ、好《エ》デアなあ、春に成《な》テ、鯡《ニシ》ゴト干して、馬《マゴ》出《だ》して、春風ア吹グ中《ナガ》で田《タコ》掻廻《カマ》して、はゝゝゝゝゝ。晝間《ひるま》ネなれば田打櫻《タウヂざくら》の花《ハナコ》見《み》デ酒《サゲ》呑《の》んで、それガラ又《マダ》グワツグワツと田サ這入《ハエ》て、はゝゝゝゝゝ『婆の腰《コオソ》ア、ホウイヤ、ホウ……、婆《ばゞ》の腰《コオソ》ア、婆《ばゞ》の腰《コオソ》アホウエヤ、ホウ……』と津輕の山地地方の温泉地、とある村立共同浴場の湯氣の中から廣くまるい肩の一角を見せた存在物が恁《か》うして民謠「婆《ば
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