その母に背かせ嫁《よめ》をその姑に背かせんが爲めなりだ
爲めなりだ

だから自分はいつもひとりぽつちだが
永遠にまゐらない
君等を友にしないことで永遠にまゐらない
自分の友は道ばたの漁師や不良少年やうろつきものから出てくるのだ
自分にひとりでについて來るのだ
彼等が永遠の人間になるのだ

ああ君等よ
君等と同じ人間であつて
自分は斯くの如く君等を輕蔑せねばならないのだ
無視せねばならないのだ
自分と君等との大きな相違點は
工匠《いへつくり》の棄てた石を家の親石にするのだ
眞理の燈《ともしび》を桝《ます》の下から出すのだ
一切の邪魔物をとり去つてその光をあらはにするのだ
砂の上の家を無殘に突き飛ばして
岩から新しい家を建てるのだ
どんな家かも知らない君等とはだから永遠に離れるのだ

自分もその家はどういふ家か解らないが
四方の城壁はががんとして大きく
白堊岩《はくあがん》よりも銅の鏡板《かがみいた》よりも堅い光つたものにしたい望みだ
屋根もわからず
鐘樓もわからず
尖塔もわからないけれども
土臺《どだい》の仕事はやや出來てゐる
流動する水のやうだけれども
コンクリートより丈夫だ
柱はふら
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