に突つかからない
熱心の度が淺い
だから自分とは永遠に遠い
今見たいでは永遠に離れる
手を握る折りがない
握つても力が這入らない
永遠に離れる
自分はひとりになつても一向かまはない
孤立は覺悟の上だ
自分程人間を愛して一緒になりたがる人間もすくないが
自分程兎角人と離れ勝ちな人間もすくない
けれども自分はいつでもあらゆる人と手と手を握り合つてゐる
自分は人は好きだ
後ろから後ろと手を廻して握り合つてゐるのだ
向ふはさう思ふまいが握り合つてゐる
今はそれだけより出來ない
出來ないから明《あか》るみへ出て公然《おほぴら》に握りたいと思ふのだ
自分は暗闇《くらやみ》に埋れたものを明るみへさらけ出す
しかも美しく強くさらけ出す事が出來る光の子なのだ
しかし今自分のすることはぎらついて
厭かもしれないが
氣やみ患者が明るみを厭がるやうに
僕のする事は嫌がられるかもしれないが
自分はかまはず荒療治をして行くのだ
がむしやらに出て行くのだ
冷酷無殘にやつて行くのだ
人がまゐらうが倒れようが顧慮せず一切やつて行くのだ
地に泰平《やすらかさ》を出さんが爲めに吾來れりと意ふなかれだ
人をその父に背かせ女を
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