遠くにわかれわかれに溺れてゐるものは知らず
目見えぬものは知らないけれども
ああ吾が筏はかかる中を行く
ああ吾が筏はかかる中を行く
充ちふくれて行く格鬪の力を感じながら
えいえいえいと乘り切つて行く
いつかはこの暴逆な大洋を自由自在に乘り廻し
あらゆる嵐
熱
みじめ一切を外にして
氷結、睡り、死一切を外にして
強烈異常の船一艘
作る力を感じつつ
太陽崇拜 ――八月十一日
ああ太陽よ
自分は君を愛す
君は一人であつて
あらゆるものに超越してゐる
あらゆるものを愛してゐて
常に君は孤獨である
君は絶え間もなく自轉してゐる
のびちぢみしてゐる
そして進んで行く
無限に生れて無限に走つて行く
君の運行する線は
空しいけれども
君はその何もない所を
ある如く走つてゐる
君は空しくぶらさがつてゐるのでない
絶えず内から
中心から
ぐるぐる力を出してはずんで行くのだ
ああ眩《まぶ》しい光を放して
空間から空間へ移つて行く
君よ
めげず
出し惜しまず
燃えてゆく
偉大な運行者よ
君はひとりだ
しかも萬人を愛してゐる
常に萬物の先きになつて
あらゆる暗い影に
君の光をさして行く
あ
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