せんやまんや》の燈明《あかり》の街《まち》に
咲いてものがなしい月のダリヤ

生《なま》な眼色《めいろ》は燐火《フオスフオラス》を吸ふ青びかり
肌着の緋襦袢《ひじゆばん》にぬくぬくと、うづめる※[#「ぼう+臣+頁」、第4水準2−92−28]《おとがひ》の心細さ悲しさ
ガスはかがやくとも
座敷の夢はとほく曇り
白粉《おしろい》にとかされた涙にぞ青白いガスマントルの疲れやう、廓暮《くるわぐら》しの疲れやう
赤い唇《くちびる》に寐息《ねいき》を吸ふ月のダリヤ
赤い唇に寐息を吸ふ月のダリヤ

人足《ひとあし》くらい江戸町《えどまち》に
月のダリヤのメランコリイ

 心

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グレエゲルス 君のいふのが本當で僕のいふのが嘘なら、人生は生きてる價値がない
レルリング なあに人生は至極らくになるさ、たつた一つあの難物の借金取りさへ追つ拂へたらね、始終僕等貧乏人をはたつて苦しめる理想の要求といふやつを
グレエゲルス (前方を直視して)そのことでは僕はうれしい氣がする、自分の運命が何であるかと思ふと
レルリング 失敬――その君の運命といふのは?
グレエ
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