ンドをイルミネーションのように飾りたてて、幾十万円かの資産を有していたというに、あわれにも公爵家は百余万円の浪費のために、公爵母堂は実家へ引きとられなければならないというほどになり、館《やかた》は鬼の高利貸の手に処分されるようになり、若くて有為《ゆうい》の身を、笹屋の二階の老隠居と具張氏はなってしまった。桃吉が資産家になり、権力が加《くわわ》ってゆくと共に、今は爵位を子息にゆずって、無位無官の身となった具張氏は居愁《いづら》い身となってしまった。やがて二人の間に破滅の末の日が来て、具張氏は寂しい姿で、桜子夫人の許《もと》にと帰っていった。ささやの三階から立ち出た人には、あまり天日《てんぴ》が赫々《かくかく》とあからさますぎた事であろう。九尾《きゅうび》の狐《きつね》玉藻《たまも》の前《まえ》が飛去ったあとのような、空虚な、浅間しさ、世の中が急に明るすぎるように思われたでもあろう。その桃吉は甲州に生れ、旅役者の子だというが、養われたさきは日本橋の魚河岸だったという事である。
ぽんたは貞節の名高く、当時大阪の人にいわせると、日本には、富士山と、鴈次郎《がんじろう》(大阪俳優中村)と、八千
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