り》もさぞ鳴きすぎることでございましょう。月明《つきあかり》に、夜空に流れる雲のたたずまいもさぞ眺められることで御座いましょう。そして静寂な中に、ともしびをかこんで、お子様がたのおだやかな寝息に頭をまわしながら、静かに、あなたがたは何をお読みになっていらっしゃるか、何をお思いになってお出《いで》であろうか、または、何についてお談話《はなし》をなされてであったろうかと、ふと何ともいえぬ懐《なつか》しみが湧《わ》き上りました。
らいてうさま、あなたのお健康《からだ》は、都門《ともん》を離れたお住居《すまい》を、よぎなくしたでございましょうが、激しい御理想に対してその欲求《おのぞみ》が、時折何ものも焼尽《やきつく》す火のように燃え上るおりがございましょう。けれどもまた、長い御一生に――あなたばかりでなく、お子様がたにも――おだやかな、滋味のしたたるような今の御生活が、しみじみと思い出されるおりがあろうと思いますと、只今《ただいま》の楽しいお団欒《まどい》が、尽きない尽きない、幸福の泉の壺《つぼ》であるようにと祈られます。
三
らいてうさま、
時折来訪される人で、あなた
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