。要するに、共に語って痛快な婦人の一人であったろう。男が恋うることなしに親しく交わりえられる婦人の一人だと私は思っていた。 ――馬場氏記――
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とあるのから見ても、そうした婦人《ひと》で、並々の容色と見えれば、厚化粧で人目を眩惑《げんわく》させる美女よりも、確かであるということが出来ようかと思われる。
その上に、もし一度《ひとたび》興起り、想|漲《みなぎ》り来《きた》って、無我の境に筆をとる時の、瞳《ひとみ》は輝き、青白い頬《ほお》に紅潮のぼれば、それこそ他の模倣をゆるさない。引緊《ひきしま》った面に、物を探る額の曇り、キと結んだ紅い唇《くちびる》、懊悩《おうのう》と、勇躍とを混じた表情の、閃《ひらめ》きを思えば、類型の美人ということが出来よう。
誰に聞いても髪の毛は薄かったという事である。背柄《せがら》は中位であったという。受け答えのよい人で話|上手《じょうず》で、あったとも聞いた。話込んでくると頬に血がのぼってくる、それにしたがって話もはずむ。冷嘲《れいちょう》な調子のおりがことに面白かったとかいう。礼儀ただしいので躯《からだ》をこごめて坐っているが、退
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